工学の立場におけるトライボロジーの意義
(トライボロジーとはどんな科学技術か?)


 
機械はその機能を発揮するためあらゆる部分が動きます.
それ故,機械の故障や寿命の原因の75%は動く部分-2つの物体の接触面-で発生しています.
 また,機械のエネルギー損失の多くは接触面の摩擦に起因しています.
故に,「トライボロジー(接触の科学と技術)」は,
「信頼性と耐久性に優れた機械」と「省資源・省エネルギーを実現する機械」のための鍵を握る研究領域として認識されています.

 加えて近年の機械の性能限界は接触面の摩擦と摩耗特性に支配されています.
 ヘッドとディスク間の接触部制御技術に支配されるハードディスクの記録密度の限界は,その良き一例です.
即ち,「トライボロジー」は,
信頼性と耐久性に優れた機械を実現し,省資源と省エネルギーに貢献するのみならず次世代の「高性能機械システム実現」の鍵を握る科学・技術です.


以上をまとめると機械(工学)におけるトライボロジーの意義は以下のように整理されます.
  1.機械の寿命を支配する.
      
即ち,トライボロジーは省資源,省エネルギーを実現するための鍵を握る科学技術です.
  2.機械の信頼性を保証する.
  3.機械のポテンシャルを発揮する.
      
即ち,トライボロジーは機械の性能を保証するための鍵を握る科学技術です.
  4.機械の性能を支配する.
      
即ち,トライボロジーは革新的機械を創成するための鍵を握る科学技術です.       
                                                       

機械設計におけるトライボロジーの意義?

 従来の機械は,機械力学,材料力学,流体力学,熱力学をベースに
「材料と形の設計」が行われてきました.
そしてその機械の要求性能に答える機械要素(しゅう動部)を設計・実現することが信頼性と耐久性に優れた機械のためのトライボロジーの役割でした.
 しかし,従来存在し得ない高機能機械のためには,性能の鍵を握る
「表面と接触面の設計」が必要不可欠となります.
優れた接触面設計,優れた摩擦摩耗特性を発揮するための機械システム全体の最適設計が求められます.
 「材料と形の設計」とともに「表面と接触面の設計」をはじめると機械は変わります.
トライボロジーを考慮した機械の最適設計により,今まで実現できない機械の創成が可能になります.
このような機械設計法を,私は,以下のように呼びます.

    
摩擦と摩耗の制御に基づいた機械設計
  -Tribologically-based Machine Design -


これが,機械設計におけるトライボロジーの役割です.